ゆきすすみさりゆき ウェブ|2014 くわがた 多摩美術大学大学院 作品Webサイトhttp://kwgtms.tumblr.com/ 作家についてのお問合せ 審査員コメント 僕は寝ているとき極めて現実に近い夢を見るタイプの人間だ。その夢のすべては今まで見知ったもので出来上がっているから、基本的には夢のなかはとても親密な空間だ。でもなぜか一方で、ちょっとした寂しさや疎遠さの感覚も練りこまれている感じがする。願望が叶ったりする展開のときはなおさらだ。いつか醒めてしまうから?この作品の世界は、現実に近いそんな夢に似ている。少しずつ崩れさっていく世界は、つぎはぎされて完全に壊れてしまわないように優しくケアされる。そして、スクロールさせつづけるかぎり決して終わらない世界である。醒めることはないはずだ。でもやはりどこか寂しい。女の子が決して立ち止まったりはしてくれないからだろうか。でも、いつまでも、ときおり振り返ってはくれるのだ。 土居 伸彰 アニメーション研究・評論 この作品の作者が2年前に応募した2つのアニメーション作品「どんどんカタストロドン」や「Take1,Take2,Take3」はいずれも、自ら手がけたシーンやシーケンスに対して、自らn次創作を繰り返すという構造を持っていたが、この作品ではとうとうフレームごとにn次創作をおこなうという境地にまで到達してしまった。これまでの作品も今回の作品も、そこに登場する少女の造形や立ち居振る舞いが、作者自らが手がけたオリジナルであるにも関わらず、いかにも萌え系アニメで出てきそうな「オリジナルなきコピー」であることは共通している。しかし、今回のこうした手法により、ネットに溢れる萌えキャラにまつわる「オリジナルなきコピー」が、ほとんど濁流のようなマッシブな流れを形成しているという事実を、よりダイナミックなかたちで抉り出すことに成功している。また、観る側のスクロール操作によって画像が表示されたウェブページという状態から、アニメーションという次元へと相互に変化する点や、Tumblrのアーキテクチャを活用しているために、作品を構成する要素が自身が常にリブログや他者による改変にさらされてる点など、作品の形式的な部分でも非常に洗練されており、ネットアートとして考えても金字塔と言えると思う。 渡邉 朋也 作家 2023 アート&ニューメディア部門 映像&アニメーション部門 ゲーム&インタラクション部門 パートナー賞 2022 アート部門 エンターテインメント部門 パートナー賞・ナレッジ表彰 2021 アート部門 エンターテインメント部門 パートナー賞・ナレッジ表彰 2020 アート部門 エンターテインメント部門 パートナー賞・ナレッジ賞 2019 アート部門 エンターテインメント部門 パートナー賞・ナレッジ賞 2018 アート部門 エンターテインメント部門 パートナー賞・ナレッジ賞 2017 アート部門 エンターテインメント部門 パートナー賞・ナレッジ賞 2016 アート部門 エンターテインメント部門 パートナー賞・ナレッジ賞 2015 アート部門 エンターテインメント部門 パートナー賞・ナレッジ賞 2014 受賞作品
僕は寝ているとき極めて現実に近い夢を見るタイプの人間だ。その夢のすべては今まで見知ったもので出来上がっているから、基本的には夢のなかはとても親密な空間だ。でもなぜか一方で、ちょっとした寂しさや疎遠さの感覚も練りこまれている感じがする。願望が叶ったりする展開のときはなおさらだ。いつか醒めてしまうから?この作品の世界は、現実に近いそんな夢に似ている。少しずつ崩れさっていく世界は、つぎはぎされて完全に壊れてしまわないように優しくケアされる。そして、スクロールさせつづけるかぎり決して終わらない世界である。醒めることはないはずだ。でもやはりどこか寂しい。女の子が決して立ち止まったりはしてくれないからだろうか。でも、いつまでも、ときおり振り返ってはくれるのだ。
この作品の作者が2年前に応募した2つのアニメーション作品「どんどんカタストロドン」や「Take1,Take2,Take3」はいずれも、自ら手がけたシーンやシーケンスに対して、自らn次創作を繰り返すという構造を持っていたが、この作品ではとうとうフレームごとにn次創作をおこなうという境地にまで到達してしまった。
これまでの作品も今回の作品も、そこに登場する少女の造形や立ち居振る舞いが、作者自らが手がけたオリジナルであるにも関わらず、いかにも萌え系アニメで出てきそうな「オリジナルなきコピー」であることは共通している。しかし、今回のこうした手法により、ネットに溢れる萌えキャラにまつわる「オリジナルなきコピー」が、ほとんど濁流のようなマッシブな流れを形成しているという事実を、よりダイナミックなかたちで抉り出すことに成功している。
また、観る側のスクロール操作によって画像が表示されたウェブページという状態から、アニメーションという次元へと相互に変化する点や、Tumblrのアーキテクチャを活用しているために、作品を構成する要素が自身が常にリブログや他者による改変にさらされてる点など、作品の形式的な部分でも非常に洗練されており、ネットアートとして考えても金字塔と言えると思う。