心悸の均衡

心悸の均衡

映像|2016

高橋 良太

東北芸術工科大学

アート部門 BRONZE

ART DIVISION BRONZE

審査員コメント

  • 不思議、不穏、不安、不気味、不明…などの言葉が頭に浮かんでくる映像。しかし、これらの「不」は拒否感などとは違って、強く心に訴えてくる何かがあるーー解読できない暗号メッセージのように。作者の説明によると、この作品はトラウマや消すことのできない記憶に関する、LGBTとのインタビューをもとにしている。だとすれば、作品が与える印象は、何かを言おうとしていると同時に何も言わないようにしている、衝動と抑制のあいだの均衡が与える感覚だっただろうか。この作品における3DCGと3D化された実写映像表現、それらによる映像の温度と質感には、完全には理解できない他者との距離とその距離からの眼差しという、内容的面での必然性がある、ということだけは確かだと思う。最近は、自分のセクシュアル・アイデンティティーをまだ模索中である人や多様な価値観と考え方を支持する人たちまでを含むLGBTQA(Lesbian, Gay, Bisexual, Transgender, Queer/Questioning, Asexual and/or Allies)という表現が使われているそうだ。暗号のようにも見えるこの文字列は、いつか最後の一文字に凝縮され、すべての人(All)になる日まで増えていくのだろう。

    馬 定延(マ・ジョンヨン) メディアアート研究・批評