昨今「出会い」の場は多様化し、中でも恋愛や肉体関係の相手を見つけるための場は、スマホなどを通じて圧倒的にアクセスしやすくなった。そうした場においては、現実の場で暗黙に共有されている他人との距離感やコミュニケーションの形態とは全く異なり、人々は直接的な言葉を使って素早く距離を縮め、恋愛や肉体関係の相手と出会うためだけに行動していた。これらは現実の場における交わりを目的としたものであり、人々は仮想の場で素早く出会った人とともに現実の場へ脱出し、またこの場に戻る、という行為を繰り返していた。こうした恋愛や肉体関係の相手を見つけるための仮想の場は、現実の場からすぐにアクセスできるにも関わらず、独自の文化が発展している「別世界」のようであった。本作では、恋愛や肉体関係の相手と出会うために、その目的に特化した仮想の場で彷徨う人々を描き出し、その場で形成される人間関係とはなにかを探る。
SNSに対する現実、危惧を暗示させる作品。「エイム」「協力者」「キー」という架空の言葉を使いながらも、その言葉の意味を想像することは容易い。いや、そのように見る側が結び付けてしまう。自分たちの文化を異文化であるように客観視する視点を与える。SNSやAIに対する問題提起をテーマとした作品が今回多く見られたなか、そのことにより、本作からは高いリアリティを感じられた。