学生CGコンテストに応募するスタンプ
その他(現代美術)|2018
現代美術の状況として2つの問題がある。『どんなものでも美術になってしまう事』と『原点を辿ると無限に遡り続けてしまう点』その2つを解決するための実験を試みる。10年前の人にこの作品を説明するためには、まずスマホというものがあって、アプリがあって、ラインが、スタンプが、というようにマトリョーシカのような入れ子状に意味が重なってしまう。まさにその入れ子状というキーワードが現代を形作っていて、あらゆる時代のあらゆるリソースを断章取義的、リツイート・リブログ的に軽薄に利用し人は自分自身やその作品の根拠を仮設する。しかしそういって作られた仮設は完成してしまえば、どうなっていようと美術に吸収されてしまう。それを打破するために、あえて乱暴に誤読するとすれば、あえて”完成させず”あえて”見栄えに回収されない”作品でなければならない。仮設に仮設を積み重ね続ける事を続けることで臨界点を突破するしかないと考える。この作品はそういった現代美術に対する軽薄かつ未熟な反撃の為に、作品たらしめる為に作品として提出し、作品たらしめる為に論理を積み上げ、作品たらしめるために存在する作品である。
ラインスタンプを現代美術として提出し、このコンテスト自体に言及している。自覚的に軽薄ながら、その方法論は大胆であり潔く、圧倒的に少ない手数で、簡潔にこのコンテストに対しての自己批判が成されている。分かりやすく、強いインパクトがあり、根底から何か覆そうとする意志を感じ、期待を込めて評価した。コンテキスト的にはジョセフ・コスースや松澤宥によるコンセプチュアルアートの系譜や、ルネ・マグリットの「イメージの裏切り」などの記号論的アプローチにも接続できるだろう。そういった試みを現代人に最も馴染みのあるメディウムで成し得ている。そして、そこを単になぞるようなことだけではなく、現代美術の現状の問題を乗り越えようとする独自の仮説を立ててる点も野心的であり、興味深い。