2018年9月3日10:00~17:00 東京藝術大学上野キャンパスにて藪の付近で7時間蚊に刺され続け、収集とその記録を行った。
そして同月7~9日、収集の時間と同じ10:00~17:00の間、蚊の収集を行った藪のすぐ近くにある建物内にて展示を行った。記録映像も展示中の時間と映像内の時間が同時刻になるよう上映している。
日常で気にも留められず、記録されることのない行為の瞬間は、他者にとっては重大な瞬間であっても、我々が記憶する時の流れから抜け落ちていく。この作品ではそのような普段記録されない事柄の足跡を作り、収集して並べることで一回一回の行為の印象が変わる体験を作ることを試みた。
鑑賞者も生まれた時から違和感なく繰り返しているが、その対象にとっては重大な出来事である行為の一つとして、「蚊を叩き潰す」ことを取り上げた。
今回私はわざわざ長時間、蚊に刺されるため藪に居たので、鑑賞者の日常から剥離した行為に感じられるかもしれないが、展示場所を記録映像ほぼ同じ場所にして同時刻で進行させることにより、鑑賞者が今まで行った、またはこれから行う「蚊を叩き潰す」行為へと作品を繋げられるよう試みた。
他者への意識の揺さぶりを狙いとするプライベートなアーカイブ作品。塵も積もれば山となる(まるでビッグデータ)と言ったように、「蚊を叩き潰す」といういっけん日常的で些細な、でもちょっと後味が悪い行為とその結果から、何とも言えないゾワゾワ感を覚える。些細なゾワゾワが増幅され、一つの大きなゾワゾワとなったようだ。このアプローチを推し進め、作者が本来意図していた「行為の印象が変わる」、つまり「増幅」から「意味の変容」への展開をみてみたいと思いました。