八紘之基スタジアム
インスタレーション|2018
川又 健士
武蔵野美術大学
宮崎県に建てられた八紘之基柱(あめつちのもとはしら)。
この塔は日本が中国に侵略し戦争を行なっていた1940年に建てられた。神武天皇即位紀元2600年を祝う事業として、また当時の国内の国威発揚のために。
この塔は彫刻家日名子実三によってデザインされた。日名子はサッカー日本代表の八咫烏のエンブレムマークをデザインした男でもある。そのことなどを踏まえながら、この塔を現在の時代にスタジアムとして姿を変えて出現させ、スポーツやそれに関わるナショナリズムなどの今日の政治的な問題を表出しようと試みた。
八紘之基柱を起点に、歴史的な事実に基づき、スポーツとナショナリズム、引いては今日的な政治問題をあぶり出そうとする意欲的作品。また、八紘之基柱にまず焦点を当て、そのキーワードから、ダイナミックかつ複雑に物語を紡ぎ出そうと試みる作者の視点はとてもユニークである。ただ、応募資料のみではその表出しようと試みた政治的問題がどういったものなのかいまいち判然としないではあるが、「メディアアート的作品」に囚われることがなくなった本コンテストにおいて、こういった作品はより評価の対象として議論されるべきだと感じる。