悪い,やっぱつれぇわ,生理痛
ガジェット|2019
麻田 千尋
原 直弥, 東 直樹, 堤 琴里, 大塚 雄太, 合田 怜央, 石田 健太郎, 大森 和, 朝日 隆大
甲南大学
月経教育での性差における認識の差は大きく,男性の理解度や女性の認知の差は埋まらないままである.本体験では独自の周波数,振幅を電気刺激により提示し,子宮収縮感のある痛みを持続的に下腹部に与えることで疑似生理痛を体験することを可能にした.
また,性差関係なく行う日常行動を3次元位置計測システム POLHEMUSで検出し,速さの値に応じて出血体験システムから温感提示することで血が垂れる感覚を与える。これらの要素を組み合わせ,誰でも月経を体験することを可能にする.この体験を通して男女の月経に対する意識の溝を埋めるとともに,これからの多様性を重要視する文化形成に大きく貢献する架け橋になると考える.
生理痛という、多くの女性にとっては、ごくありふれた厄介事でありながら、男性には遠く理解が及ばない、そして、女性にとっても個人差のある、日常的でありながらも特殊な状態をテクノロジーの力によって、他者と共感させるものへと昇華させた手腕に感心した。多くの女性達が、生涯のある期間に渡り、定期的に襲ってくる避けられない痛みは、繰り返し感じていることなのにもかかわらず、本人以外と共感することが難しい。この作品は、その状態を直接体で感じさせることで、体験者に言葉や映像では比肩できないほど強烈な印象を残したと思う。視覚、聴覚以外の感覚をも使って体感させるという、VR作品が持つ特性をフルに有効活用しつつ、自分以外の身近な他者への理解を促すという、社会的意義をも持ち合わせているところが素晴らしいと感じた。