しばた たかひろ
青山ゆり華, 中村平, 澤田怜奈, 鶴岡紗衣, 伊藤琴音
東京藝術大学大学院
子供は皆、願いを持っている。学校に行きたくない。スカートを履きたい。水溜りに触れたい。晩ご飯にハンバーグを食べたい。それらの願いはとても細やかで素直だ。彼らの願いは『子供の考えることだから。』という理由だけでお粗末に扱われてはならない。ひとつひとつ当たり前に尊重されるべきだ。もし願いを否定され無かったことにされたら、子供たちはどうしたらいいのだろう。ひとりで生きていけない子供たちは、親からの愛情を得ようと必死に、自分が何を願っていたのか忘れようとするのだ。
張り詰めた緊張感の中、一見可愛らしいドローイングのキャラクターと生々しい実写を組み合わせ、子供と母親の関係を描いたアニメーション作品。
いけないことだとわかっているものの、つい、子供を傷つけてしまう母親。そのあとすぐに優しく子供の傷を癒し、抱きしめますが、彼女自身が過去に負った傷はずっと癒えないまま。それが見ていてとても辛かったです。
人と関わりながら生きていると、誰かから意図的に傷つけられることも、無自覚に傷つけられることも、逆に自分が他者を傷つけてしまうことも多々あります。時には自分で自分を傷つけてしまうことも。私たちはその傷をなんらかの方法で癒し(忘れて)、生き続けます。そんな当たり前の、忘れてしまっていたことを、思い出させてくれる作品でした。