サバイバルペット

サバイバルペット

インスタレーション|2019

山口 千晶

多摩美術大学

作品Webサイトhttps://popopotym.tumblr.com

作者Webサイト https://popopotym.tumblr.com

実際のペットが虐待を受けたり殺処分されることが問題とされている中、ペットロボット(動物を模した電池で動く玩具)を処分・売買されることに誰も疑問を持たない。まだ生きていたかったと願っているかもしれないのに、それは物であり、実際に命が宿っているわけではないためぞんざいに扱われてしまう。しかしペットロボットは人間がいないと自ら起動もできず、壊れても自ら修理をすることは出来ない。つまり人間がいないとペットロボットは死というものを迎えてしまう。生存維持するためには、 人間に見つけてもらってお世話してもらうしかない。捨て犬、捨て猫のように、自分の命を守るためにこちら側に必死にアピールをする。どんな手を使っても、ロボットとしては考えられないこともして、 生存維持のため、人間に助けてもらおうとそれぞれ演技し、待っている様子を制作した。

審査員コメント

  • これからの社会で起こっていくであろうロボットの大量廃棄という問題について、極めてシンプルな直方体の自作ロボットにより最小限の要素とインタラクションで予期・表象した作品。「鑑賞者それぞれが思っているペット感を投影しながら鑑賞できるようにするため」という理由で、いかにもなロボットらしくない素っ気ない筐体が選択されているが、作者の狙った独特の哀愁、健気さ、愛玩動物らしさの要件がミニマムながらも抽出されている。
    生命と非生命の境界、日本人のアニミスティックな感覚、様々な思索がスコープに入っている作品であり、作者のブラックユーモアのセンスにも特異性を感じた。作者が取り扱う問題意識は一見素朴で幼いようで、今後の未来社会における生命のあり方、愛玩機械と人間の共依存関係など、未来のディストピアへの仄かな予知と普遍性を帯びている。筐体のクオリティやインタラクションのブラッシュアップ・作り込みなどは今後必要かもしれないものの、世界のインタラクティブアートやバイオアートなどの潮流もインプットしつつ、同時にそこに引きずられすぎず、自分にしかない違和感を大事にしながら末長く作品を生み出し、独自の表現を追求してほしい人だと感じた。

    市原 えつこ メディアアーティスト/妄想インベンター