ワンダフル千鳥足 in ワンダーランド

ワンダフル千鳥足 in ワンダーランド

アニメーション|2019

岡田 詩歌

東京藝術大学

ある日学校から帰ろうとする私の目に飛び込んで来たのは、当時好きだった男性が恋人と一緒にタバコを蒸しあっているところだった。ショック受けすぎた私は、そのまま家に帰ることなどできず、歩 くと1時間以上かかる家まで徒歩で帰ることにした。スーパーで買った酒を飲みながら。 しかし、後々その時に撮った写真や地図のスクリーンショット、地図にマークされた場所を辿ろうとしてもどうしても自分の記憶と合わず、酒で記憶を失いながらも突然地元に辿り着いていた当時の自分が不思議だった。 落語の技法の「道中付け」とポップなイメージの羅列を融合して、酒と街に呑み込まれながら東京というワンダーランドを散策する自分を追いかけるセルフドキュメンタリーアニメーション。

審査員コメント

  • 失恋した女子大生が、すぐに帰宅するのが嫌で、ぶらぶらとあてもなく寄り道を繰り返す。お酒を飲みながら。ただそれだけの短いアニメーション作品。

    絵柄がどんどん変わりテンポが早くなっていく演出により、良い塩梅にお酒が回って、失恋の痛みよりも「なんだか楽しくなってきちゃった」感が強くなり、しかしその後酔いがさめて「なにやってんだろ」と虚しさがこみ上げてくるまでが見事に表現されており、感心しました。

    落語によるナレーションが、序盤は哀れな自分自身を客観的にエンタメ化しているように聞こえるのですが、途中から、酔っ払った主人公によるリアルタイムの妄想の声のように聞こえてくるのもまた面白かったです。

    僕はあまりお酒が飲めないのですが、たまには思いっきり一人で酔っ払って、夜道をあてもなくぶらぶら歩いてみたいな、と思いました。

    大山 慶 プロデューサー/株式会社カーフ代表取締役