ENTERTAINMENT DIVISION BRONZE
見ている人をドキッと感じさせる作品を作りたいと思い、制作に挑んだ。この「ドキッ」の中身は感情を揺さぶられるような、少し胸がキュッとするような味だ。そのため作品の中で主人公が向ける感情は、恋愛的感情ではない。彼女の中の美的な性癖が現れた瞬間を切り取っている。細くて華奢なラインに惹かれているが、決してそれが世間的に「良いもの」ということを伝えたい訳ではない。私自身、女性の身体の曲線は全て魅力的だと感じているし、主人公のふっくらとした身体の線もかなり気に入っている。
題材にしたのは自分の思春期の思い出である。沢山の苦い思い出の、今の自分の感性が育っていくキッカケになったことは多い。思春期を、あくまで主観的に掘り起こし、再構成しているので「こんな気持ちになったことはない」人もいると思う。ただ、ちょっとしたほろ苦い思い出は誰でもあるはず。たとえそれが醜いものだと思ったとしても、思い出として愛してあげたい。
女の子が持つ、少しエロチックで淡い情感がよく伝わってきました。鉛筆で描かれた柔らかいフォルムは、生き生きとした生命感を感じさせ美しかったです。シンプルな絵面なので、単純な画密度は低いかもしれませんが、女性の身体への憧れを入り口に、劣等感、妄想、繊細な感情の機微など、主人公の心の内の表現に密度を感じます。個人的で説明し難い感情にフォーカスし、文字通り輪郭を与え、クリアに描き切ってることに驚きました。内容と表現が不可分で、この繊細な感情は、この鉛筆タッチを生かした手書きのアニメーションスタイルでこそ描けたものなのではと思います。過剰に説明もせず、コンパクトな尺にまとめた点も素晴らしいです。
誰のなかにもある「変化するからだ」の記憶がよみがえる作品。思春期の少女の描写を通じて、ちいさな嫉妬と憧れ、やわらかな性の覚え、変わりゆく身体に対する戸惑いと期待、あらゆるフェティッシュと感情をないまぜにしながら、ひとつの「視線」と「感触」によって感情が外部へとひらかれていく。赤を効果的に使った2色の鉛筆のタッチも見事。