Calmbots
インタラクティブアート|2020
佃 優河
田上 大智, 貞末 真明, 鈴木 紫琉, 盧 俊利, 落合 陽一
筑波大学
融解し生活空間に浸透したインターフェースはあたかも生態系のように振る舞うのではないか?
インターフェースとは、界面や接触面を意味する英語が転じた、コンピュータと人間の接触面を指す言葉である。我々は普段、限定的な接触面を通じてコンピュータと接触している。しかし、この接触面が限定的である必然性はどこにあるのだろうか? 本作品は生活空間に偏在し変幻するインターフェースの提案を行う。ゴキブリは高い移動性能、潜伏能力をもち、我々の生活空間に偏在している。彼らをインターフェースとして用いることで、接触面は融解し生活空間へ浸透する。
では、生物によって生活空間に浸透したインターフェースは、どのような形質を持つのだろう?インターフェースは、生物による自己メンテナンス性、アルゴリズムによる自動制御、デジタルファブリケーション による多様な機能を獲得した。有機生命体と無機生命体の新たな関係性を生み出すインターフェースをある種の生態系として見ることはできないか?「小人の靴屋」のように振る舞う生態系に人類は包まれ、生物とコンピュータだけでなく、我々と生物、我々とコンピュータの関係性は変化する。
生物のもつ機能や仕組みを模倣するバイオミミクリー(生物模倣)技術は、今後大きな期待が寄せられる分野だ。本作もそのひとつで、いついかなるところにも生息するゴキブリからそのモビリティ性に着目した点は高く評価したい。一方で、生物を作品に利用する倫理的課題も残る。似たような先行研究がないか、アートとして何を伝えたいのか、倫理面での問いなどを徹底して追求していくと、本作の良さがさらに見えてくると思う。