The Balloon Catcher
アニメーション|2020
ENTERTAINMENT DIVISION GOLD
KNOWLEDGE AWARD
PARTNER AWARD
斧人間は、風船人間の町に住んでいた。ギラギラした刃が恐ろしいのか、斧人間は、風船警察から常に監視されていた。それでも風船たちと仲良くしようと努力する斧人間であったが、そんなある日、暗い地下鉄のプラットフォームで一人の風船人間が殺害される。
グラフィックスタイルについて、輪郭線を完全に閉じるのではなく、あえてキャラクタ―から突き出させることで動画として動いた際に生き生きとする絵柄を開発することを試みた。このスタイルを用い、キャラクターに、外側へと向かうようなベクトルを与え、風船人間とかかわろうとする斧人間のおかれた状態を表現しようと試みた。また、あえて顔をなくし代わりに斧などの物を頭とすることで、表情のあるキャラクターにはできないキャラクターの性格や生活を描き方を試みた。
独特な世界観とキャラクターで、長めに展開するストーリーは見る人を選ぶデザインセンスと内容だと思います。結構、好き嫌いが分かれる、良くも悪くも灰汁が強い作品。アニメーション作品としては技術的に高く、特殊な絵柄とデザインですが、最後まで一定に保たれた作画と動きのクオリティは、作品に対しての作者の執念や情念、思い入れが伝わります。セリフや字幕もないながらも、不思議な魅力でその内容を伝える力を充分感じさせる作品ではないでしょうか?
風船人間の世界の中で、斧の頭を持つの主人公。生まれ持った宿命によって他者を傷つけてたり、見た目で差別される可能性のある主人公の葛藤を、ユニークなイラストのタッチによるドローイングアニメーションよって丁寧に描き出している。登場人物はみな表情も台詞もなく、冒頭の夢のシーンの演出やアニメーションの演技だけで、感情を豊かに表現している点が特に素晴らしい。
版画を思わせるような、ドローイング風のラフな線描を前面に押し出した画面と、主人公のキャラクターとしての特異性で、現れた瞬間に出オチの作品かと思いきや、想定外に紡ぎ出されていく物語に惹かれていった。大胆なストロークとは裏腹に、しっかりとかつ、丁寧に描かれた芝居のアニメーションによって、顔も声すらもない登場人物たちの感情の機微を描写することができているからだと思う。とにかく視覚に対して攻撃的なタッチが観客を選ぶところはあるかもしれないけれど、それを抑えたとしても、この作品の本質的な魅力は変わらないだろう。