オバケの

オバケの

Ambient Animation|2021

米澤 柊

多摩美術大学

アート部門 BRONZE

ART DIVISION BRONZE

本作品は”オバケ”という技法から考察した2000年以降のTVアニメーションのデジタル作画に現れる、アニメーションキャラクターの身体についての作品である。アニメーションの”オバケ”とは、アニメーションのフレームからフレームに移り変わる際に起きる仮現運動の隙間に描かれる技法であり、アニメーションキャラクターが素早く動いたり、その心の揺れを表現することによって発生し少ない枚数で生き生きとした動きを見せることができる。 オバケとは、アニメーションが再生される前にあるべくして描かれる、アニメーションキャラクターのちぎれた肉体であり、同時にアニメーターの拡張された身体感覚となっている。アニメーションキャラクター自身には、オバケが発生しても、それを体感したり視認する瞬間は訪れない。逆に、アニメーションキャラクターの無意識としてのオバケを見ることは、アニメーターの意識(オバケ)の痕跡を見ることにつながる。

審査員コメント

  • アニメーション技法の「オバケ」を「死んだアニメ」と捉え、そこに顕れる描き手の無意識の身体感覚にフォーカスを当てた作品。Unityの3次元世界にフラットなセル画アニメを融合させた独自のアニメーション手法を発明して自ら駆使していること、ディスプレイが持つ物体性・現実と非現実の境界面としての性質に対して鋭い洞察と身体感覚を備えた作家であり、インスタレーションの存在感が極めて強いことなど、評価すべき才覚をいくつも備えている。世代や影響を受けてきた文化が違うためか、自分が容易に理解しやすい世界観からは逸脱しているが、それでもなお評価せざるを得ない魅力と強度のあった作品。

    市原 えつこ メディアアーティスト/妄想インベンター