time in space, space in time

time in space, space in time

参加型キネティックアート|2021

蓑毛 雄吾

情報科学芸術大学院大学

エンターテインメント部門 SILVER

ENTERTAINMENT DIVISION SILVER

《time in space, space in time》は、エッジ(辺)とジョイント(頂点)を組み合わせることでリアルタイムに変形する構造体を作る参加型作品である。 自動で伸縮を繰り返す3本のエッジを構造体の中に組み入れることで、全体の形状は常に変化し続ける。また、これらのエッジには3種類の動作モード(伸縮の周期と位相のプリセット)が備わっており、タブレット端末を操作することでこれらを変更することもできる。その結果、エッジとジョイントの接続形態が同一でも異なった形状変化が立ち現れる。 作品の参加者は「リアルタイムに変形する形状を動いている状態のまま組み上げる」というユニークな体験を通して、時間的観点と空間的観点を同時並行的に持ちながら形を作っていくという新しい造形プロセスを体感する。そして、その過程においてしばしば自分自身が想像していなかったような形状の変化を発見する。 本作品がもたらす体験の新規性と動的形状の予測不能性は、自らが現出させた構造体とのインタラクションという形で参加者自身の創造性を刺激し、その幅を拡げる端緒となりうる。

審査員コメント

  • プロダクトとしてのクオリティ、機能性、また実際に体験者が遊べるアトラクションとしても非常に優れた参加型作品に仕上がっている。通常こうした作品はプロトタイプレベルの提案に留まりがちだが、本作はすぐにでも商品化、または公共施設や商業空間で実装可能なレベルに昇華されている。コンピュータ内のCGモデルではなく、実際に形状の変化を空間的に体感できることで、教育的な側面も持ち合わせていることも高く評価したい。

    塚田 有那 編集者/キュレーター
  • 誰でも簡単に組み上げられるようなシンプルな構造になっていること、そのうえさらに、その形状が予測不能な不思議な動きをまとうところが、見ていて単純に面白いです。まず「誰もが参加できる」という開かれた作品の姿勢にとても好感を持ちました。そこに、一つ一つは単純な形や動きだけなのに、全体として不思議な動きがたち現れ、驚きが生まれるところが鮮やかだなと思います。

    大塚 康弘 ディレクター/株式会社デジタル・フロンティア
  • コロナ禍における作品コンテストとして、物体系の作品は、実物の感触や質感や迫力などを感じ取ることでその作品の良さがようやく伝わる場合も多く、どうしても選考面で不利になりやすいと思います。しかし、その状況下で本作品は、いくつかの種類の棒とジョイントで構成された玩具的な物であり、子供等も扱い方をわかっている様子からも、どういう魅力がある作品なのかが映像の中から十分に伝わりました。もしも量産が可能で、知育玩具コーナーなどで販売していたら、購入する保護者は結構いるのではないかと思えました。作品のコンテストではありますが、こういった商品的な「完成度」の高さも評価のポイントになりました。

    橋本 善久 株式会社時空テクノロジーズ 代表取締役CEO/株式会社ライフイズテック 取締役