Portable Shelter

Portable Shelter

ファッション、パフォーマンス|2021

安部 妃那乃

多摩美術大学

アート部門 SILVER

ART DIVISION SILVER

プリンセスが着るような衣服を見て、服にはある一定期間その土地を占有することが可能であり、それは家としての役割も同時に機能する。 しかし、服は普段顔や身体の一部をさらけており、プライベート性というのは服の中にしか内包されずほぼパブリック性のものとして扱われることが多い。逆に家は身体全てを内包し所謂その空間はプライベートとして現れる。その両 者を交えた時、果たしてその領域はどのようになるのか。 家の土地は人が勝手に決めた区域であるように、様々な場所においてその場所を家として定めて暮らす時私 はそこの場所をその内包空間をプライベートとして捉える事が出来るのか。そこで様々な場所でこの服を着 ながら暮らしてみた。

審査員コメント

  • スペキュラティブな思索だけでなく、体当たりの実践と自らの実体験を通し、公共空間と私的空間、都市空間における排除など多層的な示唆を与えてくれる作品で、個人的にも学びや発見が多かった。まるで中世プリンセスのような構造の衣服が現代の大都会ではホームレスの如く認知される状況もシニカル。ファッションを専門的に学んだ後にメディアアートを学んでいるバックボーンも興味深いうえ、今年度制作されていた3作品がそれぞれ実験のベクトルが違いつつもどれも筋が良い期待の作家で、集大成としての卒業制作が楽しみ。

    市原 えつこ メディアアーティスト/妄想インベンター
  • そもそも学生CGコンテストで、被服系のみで押し切る作品での評価は異例かとも考えますが、挑戦するその姿勢と目の付け所に対して、評価の対象とさせていただきました。現時点ではポータブルテントのファッションシーンがやや同時多発的に世界に展開し始めている中ですので、安部さん自身が、そのジャンルの中でどのようにコンテンツを展開するかによっては、将来何か跳ねる可能性は充分あるのではないかと考えられます。

    白井 宏旨 演出/ディレクター/株式会社グラフィニカ
  • プライベートとパブリック、そして公共と排除の関係性を、家が服で服が家というユニークな発想で制作・記録されたプロジェクト。コロナ禍に「ステイホーム」と叫ばれ続ける中、机上の空論に終わらずタブーの境界線を様々な場所で探り、パフォーマンスともいえる実体験を交えて展開している点もとても興味深い。
    社会性を含むテーマという点はもちろん、今後も自身の違和感を大切に独自の表現を追求し、さらに奥行きのある展開を期待している。

    若見 ありさ アニメーション作家/東京造形大学デザイン学科アニメーション専攻 特任教授