ボディジェクト闘争
インタラクティブアート|2021
近年、XR領域においてアバターなどのオブジェクトに身体所有感を生起させる研究が多数報告されているが、私は、人間の身体もオブジェクトであり、そのオブジェクトに「body」という名の特別なラベルが貼られていると考える。しかし、簡単な思考実験をするとわかるが、このラベルは強力な吸着力でオブジェクトに張り付き、なかなか引き剥がせない。そこで、その「body」というラベルを首尾よく剥がし、「オブジェクトとしての身体」に地続きにアクセスすることができる作品「ボディジェクト闘争」を考案した。本作は、体験者の意識下にある「手」としての身体と「オブジェクト」としての身体イメージが、一息つく間を与えずに交互に襲いかかる機構により、強烈な身体像の書き換えが行われ、体験者の手とオブジェクトが身体の所有権を巡って闘争し、不安定な身体感覚が生起するオブジェクトとしての特性を孕んだ身体の新しい側面に光を当てた制作物である。
コンセプト、アイデア共に秀逸で、体験型として何か得体のしれない感情を体験者に与えることになるかと思います。今可能なアイデアとして非常にシンプルかつ、今後の拡張性に対してもインパクトが大きそうなところが大変すばらしいですね。瞬間的な印象が強いのは、直接体験でのアナログならではなのかもしれません。
ハーフミラーを用いることでかいわれ大根や文房具を自分の手の一部として錯覚させる本作品は、私たちの身体がいとも簡単にすり替えられてしまうというおぞましい事実を鮮やかに示している。「私の(物理的な)身体」と「私が所有していると思っている身体」の同一性を突き崩すこの作品が私たちに提示しているのは、私たちが自らの身体を自らのものとして感覚していること自体がある種の錯覚であるという事実なのだ。