PLAY VIDEO 喪失の家/상실의 집 The House of Loss アニメーション|2022 全 振圭 東京藝術大学大学院 ART DIVISION BRONZEART DIVISION GOLD 作品Webサイトhttps://youtu.be/VFXF92xMtL8 作者Webサイト https://www.jkjeon.com 個人の経験による話、新世代は既成世代を理解できず、既成世代は新世代を理解できない。 この話は過去の自分を代弁する主人公が既成世代を理解していく過程に対する話だ。 ますます個別化され、世界が対立に突き進む最近の世代差だけでなく、他国あるいは他人に対して一度でも真剣に考えてみることの重要性を実感しながら製作した。 作家についてのお問合せ 審査員コメント 韓国人の作者が、養老院にて兵役の代替服務を行っていた際の体験を元にして制作した、アニメーション・ドキュメンタリー作品。戦争を体験した世代の老人たちが、戦後から長らく時間の経った現代の養老院の中で、今もなお戦争の記憶から抜け出せずに苦しむ様子をアニメーションならではの表現を駆使して描いている。主人公による静かで淡々と語るモノローグと一歩引いた客観的な視線、そして物語の最後に起こる出来事など、積み重なった一つひとつのエピソードが、どれも印象的で心に響く。戦争や国同士、世代による分断をテーマとした、今の時代を反映した素晴らしい傑作だと思います。 村上 寛光 アニメーションディレクター/プロデューサー/株式会社フリッカ代表 正直、圧倒されました。この作品全てにおいて、非常に高い力量を感じました。効果音や音楽の使い方、クオリティもすばらしく、戦争の記憶や憂鬱な老人ホームでの生活をテーマにした幻想的で、インパクトの強い描写は、どのシーンも繊細に描き込まれ美しく、全編に渡って高い緊張感のまま展開しており、目を放す間もありませんでした。それに加え驚かされるのが、戦争体験者の記憶が主要モチーフでありつつも、扱うテーマの本題が旧世代と新世代間の相互理解の難しさというものであり、その普遍的な問題が見事に表現されていることです。施設で生活する高齢者たちは、日々、凄惨な戦争体験の記憶に苛まれ暮らしている一方、高齢者たちを世話する若い世代の主人公は、彼らに共感することができないと語られ、安易にお互いが理解できるような素振りは見せないところが素晴らしいです。若い世代にとっては、戦争はただの遠い歴史上のことでしかなく、次々と押し寄せる現代の新しい情報の波に翻弄されている中では、到底リアリティは持てず、世代間の大きな溝が、現実みを持って描かれています。他者の悲しい記憶たちを簡単には共有することはできませんが、だからといってそれを蔑ろにはしたくない、最後に若い世代が寄り添っていくことで希望を見い出せるのではという、優しくも強い意志を感じる感動的なラストに感銘を受けました。 大塚 康弘 ディレクター/株式会社デジタル・フロンティア ストーリー、音楽、構成、構図、描画、どれをとっても群を抜く完成度の高さに脱帽する。戦争を体験した高齢者と、戦争を知らない若者。世代も立場も異なる二者は、老人ホームという空間で、丸刈りにされ、思い出も個性も剥がされ、ただただ世話をし、世話をされる無機質な存在として描かれる。静かな語りは、花火と爆弾という戦禍の記憶を呼び覚ます「音」を、水墨画のような青灰色の画面は、ラストシーンで表情が蘇った瞬間の「光」を鮮やかなコントラストで印象付ける。時代と人生、それぞれの光と影が浮かび上がると、失っていた「希望」という感情に気づき、人間としての時間が動き出す。10分弱とは思えぬ奥行きが物語の中に広がり、強く心を動かされる。 加藤 育子 スパイラル キュレーター 2023 アート&ニューメディア部門 映像&アニメーション部門 ゲーム&インタラクション部門 パートナー賞 2022 アート部門 エンターテインメント部門 パートナー賞・ナレッジ表彰 2021 アート部門 エンターテインメント部門 パートナー賞・ナレッジ表彰 2020 アート部門 エンターテインメント部門 パートナー賞・ナレッジ賞 2019 アート部門 エンターテインメント部門 パートナー賞・ナレッジ賞 2018 アート部門 エンターテインメント部門 パートナー賞・ナレッジ賞 2017 アート部門 エンターテインメント部門 パートナー賞・ナレッジ賞 2016 アート部門 エンターテインメント部門 パートナー賞・ナレッジ賞 2015 アート部門 エンターテインメント部門 パートナー賞・ナレッジ賞 2014 受賞作品
韓国人の作者が、養老院にて兵役の代替服務を行っていた際の体験を元にして制作した、アニメーション・ドキュメンタリー作品。戦争を体験した世代の老人たちが、戦後から長らく時間の経った現代の養老院の中で、今もなお戦争の記憶から抜け出せずに苦しむ様子をアニメーションならではの表現を駆使して描いている。主人公による静かで淡々と語るモノローグと一歩引いた客観的な視線、そして物語の最後に起こる出来事など、積み重なった一つひとつのエピソードが、どれも印象的で心に響く。戦争や国同士、世代による分断をテーマとした、今の時代を反映した素晴らしい傑作だと思います。
正直、圧倒されました。この作品全てにおいて、非常に高い力量を感じました。効果音や音楽の使い方、クオリティもすばらしく、戦争の記憶や憂鬱な老人ホームでの生活をテーマにした幻想的で、インパクトの強い描写は、どのシーンも繊細に描き込まれ美しく、全編に渡って高い緊張感のまま展開しており、目を放す間もありませんでした。それに加え驚かされるのが、戦争体験者の記憶が主要モチーフでありつつも、扱うテーマの本題が旧世代と新世代間の相互理解の難しさというものであり、その普遍的な問題が見事に表現されていることです。施設で生活する高齢者たちは、日々、凄惨な戦争体験の記憶に苛まれ暮らしている一方、高齢者たちを世話する若い世代の主人公は、彼らに共感することができないと語られ、安易にお互いが理解できるような素振りは見せないところが素晴らしいです。若い世代にとっては、戦争はただの遠い歴史上のことでしかなく、次々と押し寄せる現代の新しい情報の波に翻弄されている中では、到底リアリティは持てず、世代間の大きな溝が、現実みを持って描かれています。他者の悲しい記憶たちを簡単には共有することはできませんが、だからといってそれを蔑ろにはしたくない、最後に若い世代が寄り添っていくことで希望を見い出せるのではという、優しくも強い意志を感じる感動的なラストに感銘を受けました。
ストーリー、音楽、構成、構図、描画、どれをとっても群を抜く完成度の高さに脱帽する。戦争を体験した高齢者と、戦争を知らない若者。世代も立場も異なる二者は、老人ホームという空間で、丸刈りにされ、思い出も個性も剥がされ、ただただ世話をし、世話をされる無機質な存在として描かれる。静かな語りは、花火と爆弾という戦禍の記憶を呼び覚ます「音」を、水墨画のような青灰色の画面は、ラストシーンで表情が蘇った瞬間の「光」を鮮やかなコントラストで印象付ける。時代と人生、それぞれの光と影が浮かび上がると、失っていた「希望」という感情に気づき、人間としての時間が動き出す。10分弱とは思えぬ奥行きが物語の中に広がり、強く心を動かされる。