All Night

All Night

映像作品|2022

佐藤 瞭太郎

東京藝術大学大学院

安部公房による短編小説『変形の記録』から着想を得て制作した映像。深夜バスの乗客たちは暗闇の中で座席に身を沈め、浅い眠りについている。ここではないどこかの風景を夢見ながら、その身体はバスの振動で震えている。だが、身体も、振動も、風景も、すべてが少しずつずれていく。彼らはバスに揺られて移動しているようで、そのふりをしているだけだった。映像内の3Dモデルは、全てインターネット上で配布されているアセットである。彼ら同士には何一つ関係がない。だが、映像の中でだけ一瞬関わりを持ち、そして離れていく。ばらばらで関係のないものたちが集まり、接触し、散逸していくまでのロードムービー。

審査員コメント

  • 奇妙な夢の記憶のような作品だ。コレラに感染した主人公と死者をめぐる安部公房の短編小説『変形の記録』に着想を得たという本作は、現実がぐにゃりとねじれていくシュルレアリスムの映像世界を見事に描き出している。バスに揺られる乗客の不気味さ、無慈悲にバスに轢かれていくアバターたち。そのすべてがインターネット上から拾ったアセットだという演出も憎い。

    塚田 有那 編集者/キュレーター