サカナ島胃袋三腸目

サカナ島胃袋三腸目

アニメーション|2022

若林 萌

東京藝術大学大学院

アート部門 SILVERエンターテインメント部門 GOLD

ART DIVISION SILVER

ENTERTAINMENT DIVISION GOLD

PARTNER AWARD

作者Webサイト https://www.moewakabayashi.com/

本作は、隔絶された環境の中でお互いの価値観の相違に直面する家族の物語である。異なる価値観同士の存在が分かり合うという事はとても難しい。積み重ねた経験、身を置いてきた環境、今まで歩んできた人生によって決定づけられるそれぞれの価値観を本当の意味で理解するというのは限界があるだろう。しかし、分かり合えずとも相手の大切に思っている事を尊重する事は出来る事だと思う。そういった思いを今作に込めて制作した。

審査員コメント

  • 擬人化された豚と魚がひょんなことからサカナ島の胃袋の中で出会い、恋に落ちて結婚し、オタマジャクシの子供を授かる所から始まる奇妙な物語。アメリカのカートゥーン風のモノクロームのイラストと、壮大かつ重厚な音楽の組み合わせが見事なハーモニーを奏でている。価値観の違いによりすれ違う結婚生活や育児、バラバラになりかけた家族とその再生、子供の成長など、家族の葛藤と丁寧に描いたアニメーション大作!

    村上 寛光 アニメーションディレクター/プロデューサー/株式会社フリッカ代表
  • カートゥーン風、ちょっぴり毒っけのある表現で、メッセージ性をエンタメとしてラッピングして、視聴者におくりとどける作者の力量が際立っていました。「多様性、多層性に富む時代に、どうあるべきか?」を問いかけながらも、自分の考えをしっかり提示する。そんな力強いアニメーション作品として、全てが完成されていました。

    柳 太漢 デザインディレクター/アクセンチュア ソング
  • 多様性と叫ばれる時代で家族の中にある異質感・違和感を古いアメリカ的なカートゥーン・アニメーションで描いた怪作。
    魚の胃袋の中という閉鎖された空間で繰り広げられるホームドラマは「家族」というものが特殊で奇跡的な共存関係であることに立ち返らせてくれる。短編アニメーションとしては17分という長尺でありながら、ストーリー展開や章立ての工夫、オーケストラによる演奏もあり見応えがある作品にまとめきっており、観るものを新しい価値観への航海へと導いてくれる。

    若見 ありさ アニメーション作家/東京造形大学デザイン学科アニメーション専攻 准教授
  • 生き物の中に入るストーリーはこれまでもありましたが、独特なレトロタッチとシュールなストーリー、17分という尺を感じさせないシーン分けした構成など工夫が盛だくさんの作品でした。不思議な親子とちょっと悲しい展開も、どこか可笑しな世界観の中で絶妙な演出バランスを保ちながら最後の清々しいエンディングへ導かれていきます。
    映像はデジタル作画であるだけでなく、音響もしっかり作りこまれておりこの作品の深みを出していました。
    敢えて色数を無くしている点もストーリーに集中できる要素となっています。
    テーマである隔絶した世界観は時代背景も感じさせ、異なる価値観と相手への尊重は現実にある課題を想起させてくれました。

    井上 喜一郎 株式会社バンダイナムコフィルムワークス IP制作本部 デピュティゼネラルマネージャー