藤間 一輝
高下 修聡, 岩瀬 すみれ
東京大学大学院
数十年後より多くの人が宇宙空間に滞在するようになったとき、未来の私達はどんな音楽活動をするだろう。その答えを知るものはいない。しかし、「宇宙で演奏するならこんな場所・空間になりそうだ」と言われたらどうだろうか? 宇宙に詳しくない人でも、より現実的かつ豊かにその様子を想像できるのではないだろうか? 制作の動機は、「誰も見たことのない未知の領域を自分達の手で開拓したい」という思いだった。また、宇宙におけるモノの設計であれば、我々が学んでいる航空宇宙工学の知見を生かして面白いアプローチができると考えたことも理由の一つだ。しかし制作すればするほど、将来の宇宙演奏の形態は我々の推測の及ぶ範囲を超え、未知の可能性が溢れていると感じた。「宇宙で使う楽器ってどんな形がいいんだろう?」「宇宙でダンスするってどんな感じだろう?」等々、設計で明示することのない空白の部分は鑑賞者の想像の種に変わることを期待している。そして何より、この作品を通じて宇宙でのエンタメ・文化活動について思いをはせ、楽しんでもらえたらと思う。
これは遠い未来を見据えた人々の心のあり様を空間と文化によって創造した作品である。また音響体験としての建築、宇宙という異空間での演出を考え出す発想は私たちの生活をより豊かにするものである。宇宙という寄る辺ない空間の中で人類が生活や活動を始めた時、何を感じ何を求めるかはこれからのひとつの実践となっていくだろう。その一端を担うプロジェクトになってほしい。実現にはさまざまな困難があると思うが、ぜひ多くの協業や協働を可能して、現実のものになることを楽しみにしています。