AIは多くの業界で利用されている。
しかし、軽率な利用は我々の社会に存在する問題を複製することにつながる。
本作品では、生成的AIを利用してファッション・広告モデルを「生成」した時に起こりえる事象を探求する。
特に、モデル業界で一般化されている「ハーフモデル」に着目し、AI「ハーフモデル」を扱う風刺的な架空のモデル事務所を考える。
AI「ハーフモデル」は、活動中の「ハーフモデル」の画像を学習させたAIから生成された。
それらは、モデル事務所のマネージャーやスタイリストなどの専門家とのインタビューを通じ「キャスト」され「プロデュース」された。
最も多数に選ばれたモデル、ema001は、現実と同様にさまざまなコンセプトでのテスト撮影のポートフォリオをサイト上に持つ。
また、ema001はモデル事務所のオーディションにエントリーされ、書類選考を通過した。
専門家とAIの両者とも、生成されたema001を「ハーフモデル」と認識しているとすれば、そもそも「ハーフモデル」とは一体何なのか?
本作品は現代社会を映す鏡となることで、AIが真に「ジェネレーティブ」になりえる文脈を思考する。
与えられたデータセットに依存してイメージを作り出すという点で、AIによるイメージ生成は、データセットに根ざすステレオタイプを映し出すレンズであるといえるだろう。AIによって生成された「ハーフ顔」のヴァーチャル・モデルを擁する架空のエージェントをつくるこのプロジェクトは、こうした経路から、人種やジェンダーかんする支配的な価値観を、その再生産の場において顕にするのである。