WE WILL NOT BE SILENT / 私たちは黙らない

WE WILL NOT BE SILENT / 私たちは黙らない

ソーシャルアート|2022

石島 響

ベルリン芸術大学大学院

この作品では、「人々の個人的な物語」が印刷された紙が台の上を流れ、時間とともに次第に積み重なっていく。これらの物語は、社会に対して声を上げ、行動を起こした人たちによって語られた、彼女ら/彼らが行動を起こすに至った元にある経験や思考についての語りである。紙の上に落ちる消毒液(Sanitizer)は、検閲の一種であるSanitizationを表す。消毒液があたるとその部分の文字は消されてしまうが、”消毒”された言葉たちは、消毒液が乾くとともに再び浮かび上がる。 声を上げて変化を起こすこと、そして行動し続けることは、決して簡単ではない。恐さがあり、不安があり、障害があったはずだ。自分の思いや体験を共有することは、変化を起こす為の最初のプロセスである。消された後に再び浮かび上がる文字は、声を上げ続け、困難を乗り越える「私たち」の強さを表している。 これは「私」が「私たち」になるための装置である。あなたがその物語を読むことで、ひとりの物語が私たちの物語になる。私たちの声は積み重なり合い、私たちがともに生きていく未来をつくっていく。

審査員コメント

  • レシートのインクが消えては現れる、その化学的な作用を表現として昇華させる実力と技術ともに力のある作家である。自身の気持ちをいままでの歴史と重ね合わせ、消されてきた声、消えさせてはならない言葉を訴えかける。リサーチ力と表現を繋ぐこともできる作家である。問題に対しての真摯な態度、作品のクオリティともに今後の活躍を期待してゆきたい。

    滝戸 ドリタ アーティスト/ディレクター/デザイナー