光の質感とスクリーン

光の質感とスクリーン

インスタレーション|2022

山口 敏生

多摩美術大学大学院

映像とスクリーンの関係性について探求した作品。スクリーンの素材・形状によって、そこに投影されている映像の光に、質感が生成されていく映像表現。 円が蠢く映像を、円の輪郭の集合体によって切り取る。 光の粒が加速/停止する映像を、傾斜と半透明の突起を設けることで裏付ける。 円が動く映像を、凹凸のある面によって引き伸ばしたり、変形させたりする。 これら3つの方法で、映像とスクリーンの新しい関係性を構築することを試みている。 いずれも「映像をそのまま映す」のではなく、「映像の動きや質を変化させる」という役割をスクリーンに持たせている。 スクリーン上の光が変形したり、スクリーンの周囲に影響を与えることによって、光が「投影されている」ことを超えて、質量・質感を持ってそこに存在しているように見えてくる。

審査員コメント

  • 光をプリミティブな視点に立ち返り、そのもの自体の可能性を広げてくれる作品である。わたしたちを取り巻く光にはさまざまな表情があるが、それを「質感」として表現する時、光そのものだけでなく、動き、投影する対象、多層的な要素を使って綿密にデザインすることに成功している。プレゼンテーションのクオリティも高く、何を伝えれば新しい感覚が呼び出されるのか知っている作家であると思う。光に対して「質感」という言葉と感覚を取り上げたように、既存の事象に対して新しい視点を示せることは類稀なる才能である。今後もその感性に期待したい。

    滝戸 ドリタ アーティスト/ディレクター/デザイナー