まず初めに小中学生の体育の授業を題材にすることを決め、大縄跳び、いかだ流し、全員リレーなどの記憶を辿ってアイデア出し、イメージボードの制作を進めていく中で、「うまとび」という題材に出会いました。 私自身うまとびに苦手意識がありましたし、ペアを組む過程で少しだけ空気がぴりっとする雰囲気も子供ながらに感じていました。友達の少ない子が余ってしまったり、3人組の仲良しグループは誰かひとりが他の子と組まなくてはならないことを子供ながらに予感し、構えるのです。あまりいい気分はしません。こういった心情や情景を表現するために、「うまとび」という題材は私にとってベストでした。 誰しもが些細だけれどちくりと胸に刺さっている出来事があるはずです。普段は忘れているけれど、思い出すと胸の痛みは当時と同じかそれより大きくなっているかもしれません。私はそういったエピソードひとつひとつを大切にしたい。
作者のコンセプトを読むと、苦いばかりの作品かなと思いましたが、最後の展開が非常によかったです。昨今では人間の汚い部分を描き、それを弾みに世の中に流行らせるのが、エンタメの常套手段になりがちです。しかし「うまとび」は、人間のキレイな部分を映し出そうとする作者の優しさが、作品をエンタメとして仕上げている意志が感じられました。