明日のハロウィン都市
メディアインスタレーション|2023
都市開発において、利益を生まないものは排除される。開発が始まるとゴーストの居場所も無くなる。ではもし、人が太刀打ちできないような大きな力で街の形が変化し、その変化を無かったことにするのではなく、受け入れた土壌の上に人の生活が成り立つとしたら。
映像の中では、これまで単なる飾り程度にしか利用されてこなかった田園都市という構想が、少なくとも今の渋谷よりは実現されている。自然が、水が、戻ってきているのだから。この作品における「明日」とは、単なる未来ではない。そこには、これまでの都市開発で排除されてきた、ありえたかもしれない渋谷の過去の可能性が戻ってきていると言える。もはやここでは、過去から現在そして未来へと都市が発展していくというような、開発において前提とされている単線的な時間像は、成り立たない。作品のなかに、未来も、ありえた過去も、いわばごちゃ混ぜになって詰め込まれている。
都市開発によってゴーストタウンになった渋谷を舞台に、ハロウィンが伝承化された未来の様相を3DCG映像やドローイングで構成したインスタレーション。フォークロアという、人類が過去から永続的に渡してきたバトンのような生き様の文化を、未来から振り返ったとしたら、という仮説と表現の技法が非常によくマッチしている。のっぺりとした高層ビルと対照的に、ずぶずぶの沼地という低い視点で映像は展開する。朽ちているようで、そこにはカラフルな植物や百鬼夜行さながらに練り歩く生命体が存在し、都市のうごめき、経済成長とは異なる湿った豊穣さを感じさせる。街の文脈なども十分にリサーチされており、作品としての強度がある。今後の発展が楽しみである。