※写真はイメージです
グラフィックアート(写真を含む)|2023
Asuka Ishii + Kazuki Nagata
石井 飛鳥, 永田 一樹
慶應義塾大学
本作は、「江ノ島」について画像生成AIモデルにて生成した画像と、それらを現地で模倣して撮影、編集した写真を対比させた作品である。
生成された画像は、「江ノ島」を想起させる海や緑といった「わかりやすい特徴」が頻出する一方、路地や看板、柵といった、比較しなければ判断できない「わかりにくい特徴」も散見される。AIは、膨大なイメージ情報を反映させ、それらを統合したメタの「イメージ」を出力する。よって、そこには「江ノ島」らしさの意識的なものと無意識的なものが潜在し、現実に撮った写真でそれを模倣し、近づくほどその共通点と差異が浮き上がる。
また、二つの画像はInstagramに投稿され、インターネットにこれらのイメージを戻し再び生成AIの学習データになり得る状況を作り出す。
現実に先立つ「イメージ」としての画像と、それを模倣した写真。その狭間でイメージへの私たちの欲望と無意識について考える。
生成AIを使った作品の中でも一番おもしろいと感じました。映える場所や観光として撮った大多数の写真の中にある世界も明日にはなくなるような感覚を今誰しもが感じているのではないでしょうか。そう言った視点で見るとこの作品の行為は、ディストピアで彷徨うような光景にも思えてきます。一瞬おもしろさの側面が目立つ作品ですが、最終的にインターネットの海へ再度放流したことからも、SNS画像への批判的側面も持ち合わせている、そのセンスがとても良いと思いました。生成系AIを使いながらもそのツールだけに振り回されず、アウトプットが軽いことも好感が持てました。今後もどんな表現をされていくのか楽しみです。