unburnable

unburnable

メディアインスタレーション|2023

石井 このみ

武蔵野美術大学

アート&ニューメディア部門 奨励賞

ART & NEW MEDIA DIVISION ENCOURAGEMENT AWARD

この作品は、大学内のゴミ捨て場から拾ってきた廃材やアトリエにあった電線を再利用し組み立て制作した。手前の金属には日常生活で聞く電子音、水道管のボタンには制作期間中にfield recordingした音源と自分の声を収録した。仕組みとして、それぞれの金属が静電容量センサーに繋がっており、人体の僅かな電流が金属に触れることによって音が出る。私たちが生きていること、鼓動を生み、息をして、動くこと、これらが音を生む行為であると考え、生きていることで音を生む装置を作ろうと考えた。 私は考えとして、音であるというだけ、それだけで美しいというような感覚を持っている。制作中、音がいつでもそこにあること、そこに意識を向けることを考えながら手を動かした。音を意識して道を歩く、風と足音と車と鳥と。ゴミ捨て場から楽器を作るために、音を作るためにものを拾うことは、field recordingと同じような性質があると感じた。そこにあるものを使うという行為が、そこにある音を尊重するという意識と重なりあう瞬間を、私は作っていて感じた。

審査員コメント

  • タイトルが表すのは、直接的には廃材や電線などの「不燃ごみ」をリサイクル利用するという意味だろうが、そのプロセスは、「環境」を前提とした音響芸術の根幹に関わるものでもある。日常生活の電子音をはじめ、フィールドレコーディングした音や作者自身の声も含まれるが、ゴミにburnableとunburnableがあるように、それらの音も何らかの選択と選別を経て、この特殊な楽器に組み込まれているわけである。形態は異なるものの、作者の方法論はプリペアド・ピアノにおける、音の選択にも比較することができる。生体電流にセンサー反応するメカニズムも含め、行為する身体とモノの総体を楽器にするという環境的視点は、ケージ以降の「音=世界」のコアに直結している。理論的にも確かな手応えを感じさせる才能の登場である。

    港 千尋 写真家/多摩美術大学情報デザイン学科教授