ARコミック「壁」

ARコミック「壁」

AR・VRコンテンツ|2023

今谷 真太郎

情報科学芸術大学院大学

マンガの媒体は紙からスマホなどの電子機器に移りつつある。その中では縦スクロールマンガのような新たな形態も見られるようになった。従来のマンガでは右上から左下にコマが遷移していくことで時間が進行、すなわちストーリーが進行していくのに対し、縦スクロールマンガは縦に長く並んだコマをスクロールさせて読むという、狭いスマホの画面に最適化されたコマの遷移方法を取っている。ARコミック「壁」はARがより身近な存在となった未来のマンガの形を提案するものである。本作では、読者の歩行移動を作中の時間進行に置き換えており、歩いていくことでコマが遷移していく。また、コマそのものの形態も変化しており、初めの壁面=平面に映るコマはフレームに囲まれた従来のコマであるが、空間に飛び出して以降はデバイスの画面そのものがコマとして機能している。

審査員コメント

  • これまでにも同じような企画をいくつか見たことがあるのですが、ポイントは「テクノロジー利用で満足せず、体験デザインとして設計されている」ことであり、それに好感を持ちました。人が歩き進んでいく行為と、漫画を読み進んでいく行為を、時間軸としてひとつにまとめたところが「技アリ!」です。“シャッター商店街”や夜のビジネス街を盛り上げる空間利用として非常に良いと思いながら、エンタメとして漫画を超える楽しさがそこに作れるのか?、実現化する場合、“歩きスマホ”とか大丈夫?イベントオンリーだろうか?とかその辺りを是非クリアして、こういった取り組みを定着化させてほしいなと思いました。

    柳 太漢 デザインディレクター/アクセンチュア ソング