ProgrammableGrass

ProgrammableGrass

研究開発プロジェクト|2023

田中 康二郎 水野 暁斗, 加藤 虎之介, 三河 正彦, 藤澤 誠

筑波大学大学院

ゲーム&インタラクション部門 優秀賞

GAME & INTERACTION DIVISION EXCELLENCE AWARD

作者Webサイト https://tonali-kojiro.com

昔から人類は,植物の自然美に魅了されており,現代の我々も日常の景観に点在する芝生や木々から,緑の景観を享受している.加えて,我々は植物を自然の緑に親しむメディアとしても探求するようになり,芝生・田んぼアートのような,植物をキャンバスとしたアートも生まれてきた.これらのメディアは,植物への刈込みや,色違いの植物を植栽することによる,静的なイメージ描画が多くを占める.では,いかにして我々は自然の緑とグラフィカルに対話できるのだろうか? 本作では,芝生の色を計算機的に制御できる新たな人工芝を実体化した.256階調による芝生制御は,芝生を緑のインタラクティブディスプレイへと変身させ,MP4ファイルに応じたアニメーションやドローイングなど,芝生は人間の問いかけにグラフィカルに呼応する.静的なメディアからプログラマブルマターへと変化した緑は,自然と情報の間で漂い,我々の目の前で芽吹き始める.

審査員コメント

  • 自然と人工の境界に位置する人工芝。この緑の広大な面積を変容可能なキャンバスとして捉える点が独創的である。従来の植物を使った表現方法、たとえば田んぼアートや芝の刈込などは、長期的に描いたものを空間に存在させられる。しかし、この作品は人口の芝をデジタル制御することで、短時間での変化を可能とし、リアルタイムで情報や感情を伝達する新たな可能性を開拓している。広告や芸術などへの活用が期待されるが、一方で災害時の公共情報インフラとしての活用も可能性があり、社会実装への提案としても高く評価できるだろう。この作品は、単なるメディアアート作品を超えた、社会的なインパクトを持つ革新的な提案であると言える。

    鹿野 護 東北芸術工科大学映像学科教授/ワウ株式会社 顧問