Phantom Walls

Phantom Walls

研究開発プロジェクト|2023

池田 匠 脇坂 崇平, 南澤 孝太

慶應義塾大学大学院

私たち人間は日々の生活の中で視覚から大部分の情報を得ている。そのため、視覚がない状態で周囲を知覚することは非常に難しい。 Phantom Wallsは、視覚を用いない空間知覚を実現するために音に注目し、空間的な音から体性感覚へのクロスモーダル効果を応用することで、目に見えていない壁から幻の”圧力”や”反発”のような感覚を生み出す新しい空間知覚の手法でである。 Phantom Wallsではバーチャル空間に存在するスピーカーによって目に見えない壁が表現される。複数の壁が存在していても整合性の取れた空間知覚が立ち上がるように、スピーカーの配置・音量・音のテンポに関する 3 つの基本法則を構成した。これらの法則により、聴覚の世界を”見る”ことにより見えない壁を知覚し避けて歩くことができる。このシステムを用いて今回は音で見る暗闇迷路というエンターテイメントコンテンツを制作した。

審査員コメント

  • 音を通じて空間を認識させる着想が斬新である。コウモリのような人とは異なる空間把握法に着目し、社会において空間とサウンドのデザインの重要性を浮き彫りにしている。テクノロジーやデバイスを利用することで人間に新たな知覚をもたらすことができる可能性がある。様々な音があふれる都市において、空間コンピューティングの進展と共に、公共空間でのサウンドデザインが求められており、この作品はそれを実現する挑戦であるといえよう。また、見えないものやナビゲーションを音で知らせるアプローチは、ゲームやエンターティメントに革新をもたらす可能性が高い。

    鹿野 護 東北芸術工科大学映像学科教授/ワウ株式会社 顧問