ホットサンドメーカーズクラブ
Contemporary Art|2024
山口 塁
東京藝術大学

ART & NEW MEDIA DIVISION EXCELLENCE AWARD
異文化の食材も挟んでホットサンドにすれば大抵美味しくなる。「ホットサンドメーカーズクラブ」プロジェクトは、世界の分断に抵抗するように、ホットサンドを通じて異なる文化や背景を持つ人々の物語を共有し、ネットワークを築くことを目指している。例えば、2022年にベルリンでウズベキスタン人の移民の青年(Rasu)と出会った。旧ソ連に占領されてきた歴史や、彼がベルリンで受けた移民当事者としての痛みを理解することはできなくても、パンで挟み(=受け止める)食べる(=語られた言葉を身体に直接取り込む)ことで、他者の経験を理解しようとすることはできないだろうか。彼が語った「I’M FROM HUMAN」という印象的なセリフを刻印できるホットサンドメーカーを制作し、これまで国内外でホットサンドを振る舞うパフォーマンスやワークショップを行ってきた。その様子を映像インスタレーション作品として展覧会で発表している。
食をテーマにした作品は、これまでも数多く存在してきました。それらは、作家本人の個人的な記憶の共有、口にする対象への問題提起、あるいは食事を芸術として成立させる作品があるかと思います。しかし、この作品は、他者の食事や食にまつわる体験・記憶、さらにはその土地ならではの食材、それは人々が築いてきたその食文化以上のものを分かち合う体験へとつながっていると感じます。共に買い物へ行き、会話を交わしながら料理をする。ホットサンドという、誰もが親しみやすい共通言語のようなメニューを通じて、お互いの記憶を共有する。この作品は、そうした体験がロードムービーのように紡がれているように感じました。分断が進む現代社会において、食を通じてどこまで他者のナラティブを尊重し、共有できるのか。その試みも含め、非常に希有な作品だと感じました。今後もぜひ続けてほしいです。