氷解

氷解

実験映像|2024

北村 嘉久

成安造形大学

氷が溶けていく過程の中で生じる動き、質感、泡、水滴などの変化を観察し、普段気付かない氷の溶ける美しさを表現した。 接写レンズを通した映像によって、氷の溶ける過程で、普段気づかない気泡の発生やレンズのような光の屈折の現象が発生する事に気づいた。またその緩慢な現象は編集ソフトで20倍のスピードで再生する事で、生き物のように素早く動く印象的な動画になった。さらに編集ソフトでは4Kによる高解像度で撮影した素材はデジタル処理により拡大できるため、さらに微細な現象を発見できた。デジタル技術を通した機械の目によって知らない世界を知ることができた。逆にこの技術がなければ、発見は無かっただろう。 照明は氷を透過光で捉えるため、透明ケースに置いた氷の下から照射した。透過光は氷の質感を強調できる。また氷の立体感を生み出すため、左右の照明を、赤と青の色違いにして氷の両側面を色で識別した。 音については氷や水に関連した効果音だけでなく、崖崩れや建物の崩壊音など氷とは無関係の効果音を意図的に使用した。この効果音の採用により非現実だが、私の実感に基づくリアリティが創作できたと思う。

審査員コメント

  • 『氷解』という題名の通り、氷の中の気泡、音、光、色、質感を巧みに用い、氷が解ける過程を繊細に描いた作品。前半では、氷が溶ける瞬間を“動”として捉え、気泡が揺れ、弾けるダイナミックな変化が映し出される。その動きが際立つ効果音と、氷が軋む音や気泡の音が相まって、視覚と聴覚で氷解の瞬間をリアルに感じさせる。マクロな世界を描きつつ、アイスバーグを彷彿させる効果音が印象的。後半では、“静”の時間へと移行し、ゆっくりと滴る水滴と静寂が対比され、氷解の儚さと美しさが際立つ。光の差し込み方や色彩表現が巧妙に計算され、音の余韻が静寂を引き立て、短い実写映像でありながら、観る者を深く引き込む。

    伊藤 より子 アートディレクター/ビジュアルデザイナー/エデュケーター/コンサルタント