ヨビとアマリ
短編アニメーション|2024
比留間 未桜
筑波大学大学院

PARTNER AWARD
VIDEO & ANIMATION DIVISION EXCELLENCE AWARD
作品Webサイトhttps://www.mh-artworks.com/2024yobiandamari/yobiandamari.html
作者Webサイト https://www.mh-artworks.com
プレイング・カードは両手に収まるほどの小さく華やかな舞台。
54”枚”の役者たちは机上で日々お客を楽しませていた。
一方、代役の白紙であるヨビとアマリは舞台裏で練習するだけの日々に閉塞感を感じているが、ある事故をきっかけにダイヤのジャックが焼失してしまい…?
私が幼少期から使用していたプレイング・カード(トランプ)のデッキ構成は、絵札・数札52枚とジョーカー2枚に白紙のカードが2枚の計56枚という他に販売されているカードのデッキ構成にはあまり見られない珍しいものであった。時折これを用いて遊んでいたが、白紙のカードは、なぜか白紙であるというだけでいかなるゲームにも取り入れられることはなかった。ヨビとアマリは、日常を生きる中で漠然と感じてきた自分は存在している意味があるのだろうかという不安感と、プレイング・カードの中に予備として付属していた役目があるのに使われない白紙のカードから発想した物語である。
白紙としてのアイデンティを収奪されたにもかかわらず、それだからこそ、舞台で軽やかに自分を演じることができる「ヨビ」と、自らのうちにある「白紙性」に直面した「アマリ」は、自分の行き着く先が仄暗いとしても、そのシステムをバックアップする存在として自らを引き受け、この構造を再生産する側へと転じていく。
トランプ・カードにおける仕掛けの一つに、ペアであることがプレイを支える性質の一つに挙げられるが、本作は、すでに知っていると思っていたこの性質を、二人で構築する関係性が史上の価値をもつという社会規範を浮き彫りにする装置として作用させ、そこに潜むあり方に鮮やかな手つきで疑問を付す。
作品の幕が閉じても続くだろう「アマリ」の空無の余韻に、心が揺さぶられる。