霞始めてたなびく
短編アニメーション|2025
山中 千尋
東京藝術大学
シノプシス:東風が吹き、しみずあたたかさをふくむ。
風景は境界なく混ざり合い、やがて山は眠る。
制作意図:私は大学時代から日本の里山をモチーフとした風景画を描いてきた。描く際に画面に流れている時間を、再現・再生したいという思いからアニメーション制作へ発展し、現在までこのテーマを探求している。《霞始めてたなびく》は、日本の七十二候の一節で、二月の大気が緩み山が霞がかる情景を描写している。里山の風景は自然現象が何層にも重なることで成り立つのだと気づき、今回の手法と結びついた。絵具が境界を越えて混ざり合うように、三層から七層のアニメーションを重ね、色と形の流動的な変化による風景の移ろいを描く。印象派が色彩と筆致で空間を描き出したように、アニメーション技術を用いて成し得るスクリーン上の空間表現を試みた。
見るほどに不思議な空間が説得力を増し、捉えきれない自然の感動が原風景として立ち現れる。網膜に映る色の喜びを分解し、再構成したかのような多層の奥行きは、自然の空間へと静かに接続されていく。その奥深さは、同時にアニメーションの手法としての画面構成を拓くよう。