小さな世界の終わり

小さな世界の終わり

短編アニメーション|2025

田久保 はな

東京藝術大学

映像&アニメーション部門 優秀賞

VIDEO & ANIMATION DIVISION EXCELLENCE AWARD

昔から、戦争が怖い。戦争反対と皆は言うけれど、いざ始まる時には国民の意思では止められないのではないか。望むと望まざるとに関わらず、わたしたちは被害者、そして加害者にさせられてしまうのだはないだろうか。それが何よりも恐ろしい。2025年現在もガザやウクライナで命が奪われ、過去にも数えきれないほどの戦争があった。この世界には暴力が蔓延しており、生まれてきた以上、わたしたちはその現実とともに生きていかざるを得ない。それでもなお、わたしは人間が理性に基づいて判断する力を持ち得る存在だと信じたい。ボイコットや選挙に参加すること、ニュースに目を向けること、たとえ小さな行動であっても、何かを変えるきっかけになるかもしれない。作品を通じて、主人公の選択を自分に重ね、社会や政治とどう向き合うか考え直すきっかけとなれば嬉しい。言語や文化に左右されず誰もが理解できるよう、セリフを排し、親しみやすい動物のキャラクターを用いた。

審査員コメント

  • かわいいキャラクターが穏やかで優しい絵柄で描かれ、そんな彼らが日々を紡いでいく作品。
    しかし、ただ可愛く歩いているだけの時から、常にどこか不穏が付きまとっていて居心地が悪い。そんな少しの違和感を抱きつつ見続けていくと、徐々にその不穏は現実味を帯びた危機へと変わっていくのだが、それでも穏やかにあろうとする日々が続いていく。中盤から終盤にかけて世界に変容が訪れても画に大きな変化はない。そこに演出された色がつくことはない。そのまま変わっていくということ、日常そのものが変わっていくということの恐怖を感じずにはいられなかった。
    見上げた雲はなにも変わらないのだ。

    山本 健介 有限会社オレンジ VFXディレクター/東京工芸大学芸術学部アニメーション学科教授