co.or.dinate
スペキュラティブデザイン|2025
北島 慎也
情報科学芸術大学院大学
作者Webサイト https://minami-3n.com/
本作《co.or.dinate》は、不可視の座標が“透明”となることで生まれる自由と孤独の揺らぎを問う作品である。
体験者は専用アプリを通じて自らの位置情報を公開し、その座標はWeb上に可視化される。見られることは「安心」のための技術として普及してきたが、その前提は家族や友人といった近しい関係性に基づいている。しかし、不特定多数に晒されるとき、座標は信頼ではなく不安を呼び起こす。
見る側にはIDのみが表示され、属性や文脈が剥ぎ取られた匿名的な他者として現れる。そこには監視と承認、共同と選択、秩序化と逸脱が同居する。わたしたちは、便利さや安全の名の下に、どこまで自らの現在地を差し出すのか。
時間軸も含め、4次元で位置情報をモニタリングできるwebアプリケーション。誰かが「いま」「ある地点に」「存在する」という、親しい人であれば楽しさや共感、安心につながる要素が、世界規模で可視化されると自分自身の行動生態が情報として晒される不安、他者を把握してしまう支配性に覆われる。それはミシェル・フーコーが『監獄の誕生』で例示したパノプティコンにも通じる心理的抑圧であり、昨今の戦争で展開されるドローンの爆撃対象として捕捉されかねない怖さでもある。作者が社会的な批評性をどこまで意図して制作したか定かでないが、ピュアな技術開発が表裏一体で背負う宿命を考えさせるという点で、極めて現代的な作品だと言える。