自動ドア – 白紙のタイプ
映像|2025
徳保 晴人
情報科学芸術大学院大学
「バグ」という言葉が持つ、単純なエラーでは片付けられない多義的な響きに、私は魅了されてきた。コンピュータの専門用語から日常に溶け出したこの言葉は、人間的な不完全さや予測不能な偶然性の魅力を宿している。
この捉えどころのない現象を、単なる視覚効果として模倣するのではなく、作品の主題として扱うことはできないか。しかし、そこには「意図して『意図されざるもの』を生み出す」という、根本的な矛盾が横たわる。
本作は、この矛盾を探求の出発点とした。自動ドアへのささやかな介入は、バグの本質が技術的な不具合ではなく、システムと人間、社会制度の間に生じる「関係性のズレ」そのものであることを露わにした。この映像は、その探求の記録であり、当たり前の風景に潜む、見えない構造への眼差しを提示する。
かつて赤瀬川原平が都市の無用の長物を「トマソン」として見出していったように、機械装置やシステムの隙間に落ちた愛おしい「バグ」たちを見出し、コミュニケーションをとり続けた記録。自動ドアのガラス面に張られたチラシがひらひらとめくれ、その動きを感知した自動ドアが延々と開閉を繰り返す様子=バグを発見。同じバグを再現しようと角度や高さなどを何度も挑戦する、真剣すぎる実験はユーモラスでさえある。日常のズレを追いかけ続ける作者の良い意味での執拗さ、社会の違和感を見逃さずに楽しむ力を評価した。