時を惑う

時を惑う

メディアインスタレーション|2025

渋谷 和史

多摩美術大学大学院

アート&ニューメディア部門 最優秀賞

ART & NEW MEDIA DIVISION GRAND PRIZE

作者Webサイト https://shibushibuya.com

これは環境から学習する小さなAIである。見ている景色から今が何時かを推論し、その時刻に針を進める。AIは特定の場所のカメラ画像と撮影時刻がセットになったデータから、画像分類タスクを学習している。展示されている3台の時計はそれぞれ別の日、別の場所で学習しているので、同じ空間に置かれていたとしても、学習した環境に応じて異なる挙動を見せる。 AIが様々なタスクをこなし、便利なツールとして人間のために活躍する現代ではあるが、このAIはただ外を見て今が何時であるかだけを主観的に考えている。

審査員コメント

  • 「時計」が自身で見た風景からその時計自身が時間を感じ、考え、時間を表示する作品。「時計」とは本来意思を持たず、ただ機械的に正確な時間を表示する「便利な道具」だが、その考えを裏返して、まるで私たちの体内時計、つまり私たちの身体機能を再現しているかのようだ。そう、この作品は時計という機械を作ったのではなく、時計という媒体を通して私たちの「直感」を表現したものではないだろうか。いつも変わらない風景だと(変化や刺激が少ないと)直感は鈍る。逆に刻一刻と風景が変化すると直感は冴える。その直感が冴え渡るための法則を見つければ、その機能が確定し、便利な道具になる。ただ、その技術はあくまで「直感」に頼っているもので実はとても綱渡りな状態。その人間社会や人間生活の機微が面白い形で表現されている。

    古堅 真彦 武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科教授