さざ波:200 年後の大地震
現代アート|2025
徐 秋成 監督・脚本・編集 徐秋成/ キャラクターデザイン・モデリング・モーションキャプチャー 徐秋成/エンディングソング Koki Sakakihara/ サウンドデザイン・ミキシング Ho Tsz Yeung/ 英訳 Robert Zetzsche
東京藝術大学
作品Webサイトhttps://www.xuqiucheng.net
作者Webサイト https://www.instagram.com/bzufr/
私たちはしばしば、自ら経験していない過去を、文化・物語・テクノロジーを介して継承し、あたかも自身の記憶であるかのように再構築する。では、その記憶が世代を越え、さらには地球そのものを離れ、人類が別の生命形態へと変容したのちでさえ、どのように語り直されうるのだろうか。
本作の映像は、ゲームエンジンを用いたシミュレーションとして、日本の「国生み」神話から、人類の宇宙移住、地球外生命体への進化へと、壮大な時間軸を横断する。物語は終盤から逆行する構造をとり、地球外生命体へと姿を変えた人類の末裔たちが、初めてこの惑星に降り立った祖先の神話を手がかりに、かつての地球を想像し、高度なテクノロジーによってその世界を再現しようと試み。複数の時間が折り重なるその交差点に「私」という視点が存在し、実在と虚構、未来と太古の起源が接続されながら作品は展開していく。
日本神話の火の神様「カグツチ」の誕生に始まり、人間と自然の成長から地球外生命体に至るという、スペースオペラ的作品である。ゲームエンジンの質感が「古事記」を現代的バーチャル感のなかで展開させるが、鍵は「シミュレーション」の概念である。裸のままの主人公がユニクロを履くのも、人類が宇宙へ移住するというストーリーも「シミュレーション」としては同一の現象。そして、地球外生命体となった人類の末裔が、かつての地球をシミュレートしているのが、この作品という一種の円環構造をもつ。過去と未来をつなぐ記憶の在り方をメタ構造にするシナリオはよく考えられており、迫力のヴィジュアルに対して脱力した独特のユーモアが光る、ユニークな力作である。